J-SLARF Winter シンポジウム 2024【3/2(土)】

J-SLARFでは3月2日(土)にWinter Symposiumを開催することになりました。多様なSLA理論と研究手法について第一線でご活躍中の研究者をお招きして、じっくり議論したいと考えています。

参加登録(参加費・無料) ※締め切りました

開催日:3月2日(土) 13時から18時ころまで
フォーマット:ハイブリッド(対面+Zoomで同時配信予定)
 ※ZoomのURLは、開催前に参加申込者にご連絡予定

開催場所:信州大学長野(教育)キャンパス 講義棟N101教室
※信州大学は県内に複数キャンパスがございます。長野市の「長野(教育)キャンパス」が会場となりますのでご注意下さい。

発表者・タイトル ※今回の発表言語は日本語です。

  • 「応用言語学における『社会論的転回』」の30年:歴史と展開
    本林響子(東京大学)
  • L2動機づけ研究の理論的・手法的変遷
    青山拓実(信州大学)
  • 談話分析を通じた社会正義の追求:日米学生間のカミングアウトから見る異性愛規範と異文化間教育の可能性
    秋山友香(東京大学)
  • 鈴木駿吾(早稲田大学)
    第二言語能力試験における合理的配慮:持続可能な取り組みとして
  • ナラティブ・アプローチ:研究と実践の継続的往還
    中田賀之(同志社大学)

要旨
「応用言語学における『社会論的転回』」の30年: 歴史と展開
本林響子(東京大学)

応用言語学におけるいわゆる「社会論的転回」は、1990年代以降学際的に展開し、応用言語学やSLA研究に多様性をもたらした。今回の発表では、「社会論的転回」以降の研究動向に影響を与えた関連諸理論とそれらに触発された応用言語学の理論や概念を概観し、各種理論がどのような論点を提示し、どのようなテーマを扱ってきたかを整理するとともに、理論的基盤の違いに起因する論争の例を紹介する。これにより、応用言語学研究における「社会的」アプローチに内在する多様性を可視化し、それぞれの主張の類似点と相違点を理解することを目指したい。

L2動機づけ研究の理論的・手法的変遷
青山拓実(信州大学)

第二言語学習者の動機づけ (L2動機づけ) に関する研究は、社会心理学や教育心理学をはじめとする様々な理論を取り入れながら発展してきた。また、2000年代のL2セルフシステム理論、2010年代の複雑系の視点を取り入れた研究など、第二言語・外国語学習に関する動機づけ研究に特化した理論や多様な手法を用いた研究が行われており、それとともに研究手法面においても。本発表では、多様化するL2動機づけ研究について、近年の理論的・手法的側面の変化についてレビューし、今後の課題について議論する。

談話分析を通じた社会正義の追求:日米学生間のカミングアウトから見る異性愛規範と異文化間教育の可能性
秋山友香(東京大学)

本研究では、米国出身でレズビアンの日本語学習者Amyと、異性愛を規範とする日本人英語学習者Yokoとの間で行われた言語交換において、カミングアウトが二人のやり取りや異文化理解にどのような影響を与えたのか調べた。談話分析の結果、二人はカミングアウトを異文化学習と捉えることで相互理解を深めたが、LGBTQ+先進国のアメリカ vs. 後進国の日本という二項対立のステレオタイプ化を助長したこともわかった。この結果を踏まえ、性とジェンダーの多様性を言語教育・研究に取り入れることが社会正義の追求にどのように貢献するのか示す。

鈴木駿吾(早稲田大学)
第二言語能力試験における合理的配慮:持続可能な取り組みとして

近年では、言語テスト研究において、限局性学習困難のある学習者に実施する合理的配慮による構成概念への影響を精査することの重要性が叫ばれている。技術発達により様々なテスト形式が開発されているものの、それらが真の意味で合理的配慮として機能するには、柔軟かつ継続的な取り組みが不可欠である。本発表では、TOEFL Juniorのリスニング問題における自己ペースリスニングの有用性を調査した研究を例に、持続的な合理的配慮の重要性や今後求められる研究課題について考察する。

ナラティブ・アプローチ:研究と実践の継続的往還
中田賀之(同志社大学)

ナラティブ・インクワイアリー(NI)は、幅広い分野の質的研究法として登場し、看護・医学・教師教育の世界においては、その社会的な必要性から大きく発展してきた歴史がある。応用言語学においても、NIは一つの質的研究法として徐々に定着しつつある。応用言語学研究と教育実践との乖離が未だ叫ばれる中、本研究では、看護・医学教育、教師教育、言語教育における NIを用いた先行研究をカテゴリー別に検証・整理し、研究者・語り手・聴衆の関係を再考することで、応用言語学研究に携わる教師・学習者・研究者の相互理解、研究と実践の相互作用の構築に資するNI研究について提案したい。

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