
ISLA研究と実践の対話
「この教え方で、本当に生徒のためになっているのだろうか?」
日々の授業の中で、ふと立ち止まって考えることはありませんか。
私たちの研究室では、教育現場で「当たり前」とされている指導法や、これまでの経験則で「良い」とされてきた常識を、科学的な視点から問い直す研究をしています。そのための有効なアプローチの一つが、ISLA(Instructional Second Language Acquisition)研究です。これは、第二言語がどのように教えられ、学ばれるのかを科学的に探究する分野です。
例えば英語の授業では、「文法は明示的に教えるものだ」「単語は単語集で暗記するべきだ」「間違いはすぐに訂正すべきだ」といった、様々な考えがあります。このような考えを整理して、より学習者に寄り添った授業ができるようにするヒントを、ISLA研究は提供してくれます。
私は東京学芸大学で英語教育研究について学んだ後、米国でSLA研究の博士号を取得しました。帰国後の10年間、SLA研究を続けると同時に、日本全国の意欲的な英語の先生方の授業に数多く触れる機会に恵まれました。当初は、欧米発祥のSLA研究と日本の教育現場は別物だと捉えており、SLA研究の知見が本当に役立つのか、確信が持てずにいました。
しかし、生徒の学びを第一に考え、創意工夫を重ねる先生方の実践を目の当たりにし、直接お話を伺う中で、ISLA研究の知見が現場の課題解決に貢献できる、確かな手応えを感じるようになりました。
このような経験から、「研究の成果を教育現場に還元する」だけでなく、「教育現場の視点から研究そのものを問い直す」という双方向の対話が不可欠だと気づきました。
ISLA研究は、「唯一の正解」を提示するものではありません。先生方一人ひとりがご自身の経験を深く省察し、教育観を見つめ直すための「思考のツール」です。私たちの研究が、そのためのきっかけとなることを目指しています。
【Note 記事】
忙しい教師のための『あたらしい第二言語習得論』のエッセンス
【代表的な書籍・論文】
- 鈴木祐一 (2024)『あたらしい第二言語習得論―英語指導の思い込みを変える』研究社.
- 金谷憲・臼倉美里・大田悦子・鈴木祐一(2020)『高校英語授業における文法指導を考える』アルク.
- 金谷憲・ 臼倉美里・大田悦子・鈴木祐一・墨田朗彦(2017)『高校生は中学英語を使いこなせるか?~基礎定着調査で見えた高校生の英語力~』東京: アルク.
【アルクとの共同プロジェクト】
高校英語授業プロジェクトSherpa
【講演会のスライド】
LET第64回全国大会 基調講演「研究と実践を結ぶための3つの視点」