【論文出版】タスクにおけるエンゲージメントに関する論文がResearch Methods in Applied Linguisticsに掲載されました

富山大学の野澤孝之先生、玉川大学の中村幸子先生、東北大学の内原卓海先生・鄭嫣婷先生、東京大学の宮崎敦子先生との学際的な共同研究論文が、Research Methods in Applied Linguistics に掲載されました。

本研究は、昨年Studies in Second Language Acquisition に発表した研究(語彙練習のタイミングが多語句表現の学習と脳間同期に与える影響)のデータを、エンゲージメントという新たな視点から再分析したものです。fNIRSによって、コミュニケーション・タスク中の学習者ペアの脳活動の同期(inter-brain synchronization: IBS、脳間同期)を測定し、談話分析にもとづくエンゲージメント指標・神経生理指標・語彙学習成果の三者を統合的に検討しました。

80名の日本人英語学習者がインフォメーション・ギャップ・タスクに取り組み、その談話を主成分分析した結果、二つのエンゲージメント成分――Lexis(目標語彙の使用に関わる関与)とCo-Construction(協働的な意味の構築に関わる関与)――が抽出されました。

特に注目すべき発見は、同じ行動であっても、その神経認知的な意味づけが指導のタイミングによって変わるという点です。語彙練習をタスクの「前」に行った条件では、エンゲージメントの高さが社会的認知に関わる脳領域での脳間同期と結びついており、真の協働的な調整を反映していると考えられます。ところが、語彙練習をタスクの「後」に行った条件では、まったく同じ協働的な行動が、言語処理に関わる脳領域での同期の「低さ」と結びついていました。これは、限られた言語リソースを補おうとする代償的な努力を反映している可能性を示唆します。

つまり、観察可能な行動指標が常に同じ意味を持つとは限らず、エンゲージメント研究においては、談話指標を神経生理指標や学習成果と組み合わせて多角的に検証することの重要性が浮かび上がりました。加えて、Lexisのエンゲージメントは多語句表現の自動性(流暢な処理)を予測する一方、宣言的知識は予測しなかったことから、語彙学習の成果を多面的に捉えることの意義も示されています。

本研究はオープンアクセスですので、論文はどなたでも読むことができます。素晴らしい共同研究者の先生方、そして神経科学の専門家の皆さまに心より感謝申し上げます。本プロジェクトの第二弾となる成果です。

Suzuki, Y., Nozawa, T., Nakamura, S., Uchihara, T., Miyazaki, A., & Jeong, H. (2026). Same behavior, different brain: A triangulated neurocognitive re-evaluation of task engagement in TBLT. Research Methods in Applied Linguistics, 5, 100331. https://doi.org/10.1016/j.rmal.2026.100331